シニカルかつキュートなネコが、飼い主やその周囲に集う友人・知人たちを観察し、その様子を、しれっと悪びれない姿勢とナイスな毒舌で語る、11編からなる連作短編集です。
英語教師のくせに、貧乏・偏屈・半ひきこもりと残念な三拍子が見事に揃った、語り手ネコの飼い主である苦沙弥(くしゃみ)先生の小汚い家は、所詮は類友と言うしかない、個性的かつ、それぞれにどこか残念でおかしな要素を持つ友人数名の溜まり場になっています。
訪問者は友人だけではありません。偏屈で名の通った先生の家には、あるくだらない事件を機に先生を目の敵にし、夫とともにしょうもない嫌がらせをするようになる器の小さい嫌味な成金オバサンやその手下ども、先生宅に連日ボールを投げ込みまくって先生を激怒させるクソガキたちなど、招かれざる客も多くやってきます。
目の前で繰り広げられる、先生と彼らの滑稽で時々アホくさい遣り取りに、(心の中で)ツッコミを入れ、鋭い批評を加えていく、皮肉屋ネコの的確かつコミカルで斬新な表現は、ニヤリとしてしまう笑いから、ププッ!と思わず吹き出してしまう笑い、アハハッ!と大爆笑してしまう笑いまで、多種多様なたくさんの笑いを引き起こします。
薄暗い虚無感や厭世観が影を落としている部分もありますが、それでも11編全体を通して見ると、笑いが勝っており、まるで、上質な落語を文字に起こしたような作品です。
そして、この小説の魅力は、鋭い人間観察だけではありません。
こっそりつまみ食いした雑煮のもちを喉に詰らせてアワアワしたり、飼い主家族にバカにされた悔しさから生まれて初めてネズミを取ろうと駆けずり回ったのに結局うまく取れずにグッタリしたりと、所々に散りばめられた語り手ネコの猫らしい愛すべき振る舞いもこの小説の目玉の一つとなっています。
かくしゃくとした文体と、現代ではすっかり廃れてしまった100年前の常識に基づく表現が多く見られるため、読みづらい箇所も多々ありますが、それを差し引いても、ユニークで面白く、笑える小説でした。
